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コラムNO4  「月は寝て待つ?立って待つ?」

執筆者: 木ノ下 千栄(きのした ちえ)
時のものさし
 大人も子供もみいんな時計をもつようになった現代。時計を持って得たもの、失ったもの、それぞれあるのではないでしょうか。

 その昔、月は人々にとってカレンダー、そして時間のものさしでした。
 例えば1日は「ついたち」と呼びますね。それは「月が立つ」、つまり新月から月が見えてきて、新たに1ヶ月が始まるという・・・。昔の人々の時間は月を中心にまわっていたのです。

月の呼び名
 ところで月にはいろんな呼び方がありますよ。どれだけご存知でしょうか?
 まず、まんまるお月さんの満月の代名詞でよく知られた「十五夜」。昔から盆踊りなどが旧暦の15日に設定されたのは、この満月の光を頼りにしていたからといいます。今みたいに街灯がこうこうと点いている中での野外イベントと違って、自然の中で人間が楽しむという風習が残っていた時代を思い起こさせます。

 この十五夜の満月から、だんだんお月さんは欠けていくわけですが、ここからが月の呼び名はちょっと「粋」なんです。

 満月は日没と同時に上がってきます。そしてその後の月は、日替わりで小1時間ずつ遅れていきます。最初は月がじりじりとためらいがちに出てくるように見えるので「いざよい(十六夜)」、そしてまたその後は2時間遅れて出てくる月を立って待つ・・・だから「立待ち月」、今度は立っていてもなかなか出てこないから座って待つ(「居待ち月」)、またその次の夜は待っても待っても出てこない・・・やっと9時をまわったころに出てくるから「臥し待ち月」。月を見てれば日付も時刻の見当もつく時代の、なんと面白いネーミング!こんな粋な心を忘れないで月見を楽しみたいものです。